「和」というものは日本人に共有の美学があり、自然と身に染みているものです。そのなかでも「書」は和を印象づける日本の大切な文化と言えるでしょう。古典書道とデザイン書道は相対的な関係にあるものの、デザイン書道はこの美意識から通じる新しい可能性と、時代の息吹を体現した存在感があるように思います。
文字と向き合うなかで、そのルーツや文化、書の奥深さを知ることはとても大切です。甲骨、金文、木簡にはじまって、書家は生涯を通じて古典のさまざまな書風をマスターしていきますが、しかし、それは一生かかかっても不可能な量だと思います。ただ、その中から自分自身の感性と現代のスピリットに響きあうものを作り出すこと、そして文字が何を伝えたいのかを示すことが文字クリエイターの役割だと感じています。
今、広告営業は提案力の時代だと思います。広告市場における急激な需要減退や広告形態、生活者の趣味志向も多様化して消費スタイルが変わるなか、今後クライアントとは新たな関係性を築くことが重要になっていくように思います。次世代広告ビジネスでも必要なものは人材であり、クリエイターには当然これまで以上に高いクリエイティビティや柔軟な発想力も期待されます。こうしたデザインへのアプローチや考え方は、自分ならどうする、といった問いかけを常に自分自身で行い、新しい自分を発見していくことが良いクリエイティブを続けていく秘訣だと考えています。
「和」をモチーフにした現代的なデザイン展開は、日本人の粋やスピリットを考慮して生み出され、幅広く確かに存在しています。このデザイン書道という分野が、書の新表現ジャンルの時代の担い手として、現代的発展を目指していく必要があると思います。